日本の脳卒中患者数は112万人1)で,脳卒中は介護要因の2位である2)。脳卒中に併発する運動障害は難治性で,生活就労の阻害状況が10年継続する為,疾患負荷量の総合的指数DALYは癌よりも高く6位,2030年には4位になる3)。我が国はH28診療報酬改定で生活動作の改善に繋がるリハビリテーションへの報酬加算を導入して実効性の向上を図り,リハビリテーションを介護保険領域へ移行する施策により財政健全化を進めている。
しかし,これを阻む要因が3つある。すなわち(1)効果のあるリハビリテーション技術そのものが不足,(2)療法士がカルテ入力や治療情報収集に忙殺され,稼働率が低調,(3)介護領域で提供されるリハビリテーションの質の担保が困難である。有病当事者のリハビリテーションへのニーズは高く,法整備の無い自費リハビリテーション事業者の増加とドクターショッピング患者の急増を生んでいる。
背景で述べた抜本的な解決を図るデジタル化診断・治療技術を開発する。具体的には(a)デジタル診断技術による治療計画作成支援と標準治療以上の効果がある介入手段の提供,(b)急性期から介護まで診断治療サイクルが継続できるワンストップ・デジタル支援,(c)ICTによるエビデンス提供を通じた介護領域での高品質なリハビリテーション導入を実現する。更には,収集されるビッグデータの解析から,今まで発見できなかった個人特性や医療行為等の関係を明らかにし,より効果の高い個別化医療を実現する。これにより,脳卒中リハビリテーションに取り組む国内外の患者個々人に最適な医療を提供し,実効性の高い運動機能回復を実現する。
【出典】
1) 平成30年度版厚生労働白書 図表1-2-4 脳血管疾患患者数の状況より
(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/01-01-02-04.html)
2) 令和2年度版高齢社会白書(内閣府)
(URL:https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/html/zenbun/s1_2_2.html)
3) THE GLOBAL BURDEN OF DISEASE :2004 UPDATE, World Health Organization, 2004
(URL:https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/43942/9789241563710_eng.pdf)
4) 平成29年(2017)患者調査の概況(厚生労働省)
(URL:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/index.html)
5) 平成8年(1996)患者調査の概況(厚生労働省)